見えざる順位

アーティストが音楽業界で活動しようとすれば、 必ず他のアーティストと比べられてしまう場面が出てきます。

そして、ほとんどのアーティストが、 自分と他のアーティストの評価の差を正しく認識できずにいます。

例えばアーティストが自分と他のアーティストを比べて、 この中では自分が最も歌がうまいと自負して、 確かにそのとおりだったとしても、 アーティストとしての評価が最下位だということも珍しくはないのです。

そうすると結果として、他のアーティストが次々とデビューしていくのに、 ひとりだけ、いっこうにデビューの気配すらないという事態が生じます。

この差は結局のところ、大人として認められているか、 あるいは、子供のような甘さが目に付くか、ということに起因します。

私の知る限り、きちんとしたアーティストはたいてい、 壮絶で凄まじく厳しい人生を乗り越えてきています。 そして今まさに、その渦中にいるアーティストもいます。

生活の心配もなく何不自由なく育ち、わがままが許され、 生命を脅かすほどの心の葛藤もなく、 優しい家族や、自分の心を傷つけない人たちに囲まれて暮らしてきたのなら、 自分自身で根本的な意識改革を行わない限り、どんなに歌がうまくなっても、 こうしたアーティストと同じスタートラインに立つことすらかないません。

私の周りには、レコード会社の社長も、プロデューサーも、 ネミューのアーティストたちや送り出していったアーティストたちも、 壮絶な人生を乗り越え、苦労話にこと欠かない人々がたくさいんいます。

そんな人たちだからこそ、人の痛みや苦しみも理解できるのだと思いますし、 私利私欲のためでなく、自らの信念を貫いていけるのでしょう。

私はそんな人たちと共に夢へ向かって歩んでいけることを、 とても幸せで、そして名誉なことだと思っています。